行動学と行動心理学と動物行動学と行動分析学 5
こんにちは。
行動分析学についてのあれこれ、第5回目です。
前回のエントリでは、「因果関係」のことについて、簡単に述べました。
そして、行動分析学は、まさにこの「因果関係」に迫っていく学問なんですね。
つまり、「行動が何故起こったのか?その原因に迫る学問」であるわけです。
これは、トレーナーであれば、是非とも知りたいところですね。
そのことについて、もう少し詳しくお伝えします。
前回のエントリで「相関と因果の違い」というものに触れましたが、さて、これらがどう違うかはおわかりになるでしょうか?
たとえば、あなたがある日「てるてる坊主」を部屋の窓から吊るしたとしましょう。
すると、翌日の天気が晴れになりました。
てるてる坊主を吊るす → 晴れになった!
では、「晴れになった原因」は、「てるてる坊主」のおかげと言えるでしょうか?
別の日に、あなたはとある公園の池でナマズを見つけました。
じっと見ていると、ナマズが激しく暴れ始め、すぐに大きな地震が起きました。
ナマズが暴れた → 地震が起きた!
では、「地震が起きた原因」は、「ナマズが暴れたから」と言えるでしょうか?
いずれも、「そんなバカな」というたとえ話ですね。
「翌日の天気が晴れになった」のは、偶然の話です。
ナマズが暴れた後に地震が起こったのも、たまたまです。
しかし、私たち人間は、2つの出来事が連続して起こると、その間になんらかの関係があると思い込んでしまいます。
たとえば、「自分が出かけると、雨が降ることが多い」ということが続くと、「自分は雨男に違いない」なんていう風に思い込んでしまいます。
上に書いた「地震はナマズが起こしている」という例は、大昔から伝わる迷信ですね。
地震が起こるメカニズムを知らない昔の人たちは、「ナマズが暴れる→地震が起こる」という現象を何度も見たことで、「地震はナマズが起こしているに違いない」と、思い込んでしまったのだろうと思います。
確かに、「地震」と「ナマズが暴れる」という2つの現象・出来事の間には、何度もそういったことが起こっているのであれば、何らかの関係がありそうです。
この「何度も起こってるから、何か関係がありそうだな」という関係性のことを、「相関関係」と言います。
そして「地震はナマズが起こしている」という、「地震の原因=ナマズ」のような、「原因と結果」の関係性のことを、「因果関係」と言います。
「地震」と「ナマズ」の関係性(相関関係)が、「地震の原因=ナマズ」という関係性(因果関係)であるということを、一度大真面目に検証してみましょう。
どうすれば良いでしょうか?
地震の原因がナマズであれば、「ナマズがこの世から1匹もいなくなったら、地震は起きない」ということになります。
あるいは、「ナマズを暴れられないように固定してしまえば、地震は起きない」ということになります。
いわば「実験」を行ってみるわけですね。
その結果、「ナマズがいなくなったら、本当に地震が起こらなくなった」なんてことになれば、「地震の原因=ナマズ」と言えそうです。
反対に、「ナマズはもういないのに、地震はまだ起こっている」なんてことになれば、「地震の原因≠ナマズ」ということになります。
ここでお伝えしたいことは、「ものごとの原因」というのは、このような「実験」を行うことでしか、明らかにならないということなんですね。
先ほども書いたように、私たちは「2つの出来事が連続すると、その間に何らかの関係性があると思い込んでしまう」という、思考の癖を持っています。
「Aのあとに、Bが起きた→Bの原因は、Aである」
専門的には「前後即因果の誤謬(ごびゅう)」というものです。
迷信などは、これに分類されることが多いようですね。
さて、ドッグトレーニングの現場において、「行動の原因」というのはある程度のウェイトを占めます。
特に「行動的な問題(いわゆる、問題行動と呼ばれるもの)」を、解決しようとする際には。
「何故、この犬はトイレを失敗するのか?」
「何故、この犬は吠えるのか?」
「何故、この犬は噛むのか?」
原因がわかれば、解決策も思いつきそうですものね。
しかし、この「原因」が、実は「単なる思い込み」だったとしたら?
なかなか怖い話ですね。
ということで、また次回に。
高山