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行動学と行動心理学と動物行動学と行動分析学 7

こんにちは。
少し間が空いてしまいました。

前回のエントリでは、「問題の解決に繋がる原因」と、「問題の解決に繋がらない原因」の2種類があるという話を、「地震と家屋の倒壊」を例に、お話しました。
今回も、そのお話の続きです。

犬の問題行動の改善やしつけを考える際、犬種特性性別年齢といったものを考慮する方は、少なくないかと思います。
たとえば…

・「○○という犬種は、そもそも××を目的として
作られた犬だから、吠えるのはしょうがない」
・「男の子は、そういう行動を取りやすい傾向にある」
・「生後○ヶ月の子犬は、そういう行動をして当たり前だ」

こういった具合ですね。

これらは、確かに「その通り」と言えるものだと言えます。
しかし、だからと言って「行動の変容に役に立つか?」というと、そうとは言えません

そもそも、問題行動の改善やしつけというのは、「犬の行動変容・修正」です
つまり、「今、目の前で起こっている行動を、いかに変えるか?」が、我々ドッグトレーナーに課せられたミッションです。
その文脈において、たとえば「犬種特性」というものを持ち出してきても、「そこから、ではどうするのか?」という話に持っていくことは困難です。

「ダックスは吠えやすい犬種だ」ということは、割とよく言われているように思えます。
しかし、「吠えているダックス」と、「愛犬の吠えに悩む飼い主さん」を目の前にして、「ダックスは吠えやすい犬種ですから」という話をしても、「はあ、そうなんですか」というところで終わってしまいます。

その後にある「では、その吠えをどうするか?」というところには、「ダックスは吠えやすい犬種だ」という「原因」は、まるで意味をなさないわけです。

これは、「犬種特性なんてない」ということを言いたいわけではないことに、注意してください。
確かに「犬種特性」はあると思います。
そもそも、現存する犬種は、我々人間が目的をもって選択交配してきたわけですから、それぞれに特性があるのは、ある意味当然のことといえます。
でも、それを「行動の変容・修正」に活用できるか?というと、そうではないわけですね。

つまり、「犬種特性」は、我々が扱える原因ではないわけです。
これは、「年齢」や「性別」も同様です。

私たちドッグトレーナーは、こうした「扱える原因」「扱えない原因」というものを、しっかりと見極めなければいけません
見極めた上で、行動の変容・修正を行っていくことが、求められます。

今日はここまで。

次回は、「扱えないのに、扱えるとほとんどの人が勘違いしている原因」について、お話したいと思います。

高山

カテゴリー: 行動分析学についてのあれこれ — dlc-pro 11:12 PM

行動学と行動心理学と動物行動学と行動分析学 6

こんにちは。

行動分析学についてのあれこれ、第6回目です。

前回のエントリでは「相関と因果」について、簡単にお話しました。
そして、「因果、すなわち物事の原因というのは、実験をすることでしか明らかにならない」というのが、前回のエントリでお伝えしたかったことです。

さて今回は、「適切な原因と不適切な原因」というお話をしたいと思います。

前回のエントリで「地震の原因は、ナマズかどうか?」というお話が出ました。
もちろん、ナマズなわけがありません。
詳しいことは調べていただくことにして、まあおおよその原因をいえば、「大陸間のプレートのずれやひずみが云々」とか、「活断層が云々」とか、「火山が噴火する前に云々」とか、そういったことが「地震の原因」とされています。

さて、これで「地震の原因」がわかりました。
では、私たちは地震を未然に防ぐことができるでしょうか?というと、これまたそんなわけはないですね。
もっともっと科学技術が進歩すれば、ひょっとしたら地震が発生する前になんとかすることができる時代も来るのかもしれませんが、今の私たちの科学では「地震の原因」はわかっても、「地震が発生すること」を、止めることはできません

では次に、「地震による家屋の倒壊」という問題を考えてみます。
家屋が倒壊するのは、紛れもなく「地震のせい」です。
地震が起きなければ、倒壊せずに済んだでしょうから。
しかし、先述したように「地震をどうにかすること」は、私たちには無理です。
じゃあ、どうすれば「家屋の倒壊」という問題を、解決することができるんでしょうか?

ここで、発想を変えます。
「家屋が倒壊するのは、地震に耐える強度を持っていないからだ」と。
このように考えれば、「家屋の倒壊問題」は、解決できそうですね。
「かなり大きな地震がきても、これだけ補強していれば大丈夫だ」となるわけです。

さて、そろそろ「この話と、犬のしつけになんの関係があるんだ?」と思い始めていらっしゃるかもしれませんね。
実は、大いに関係があるんです。

「地震による家屋倒壊問題」の例を書き換えると、下のようになります。

・家屋倒壊の原因=地震が起こるから→解決できない
・家屋倒壊の原因=強度が足りないから→解決できそう

実は、これと同じようなことを、「犬のしつけ」にも見ることができます。
それはたとえば、「他犬への吠えの原因」です。

犬が他の犬に吠えたりしている時、その原因を「犬種」や、「遺伝」といったところに求めるような話を、聞いたことはないでしょうか?
あるいは、そのように飼い主さんに説明したことはありませんか?
たとえば「ダックスは吠えやすい犬種だから」とか、「この子の親も、よく吠えていたから」とか。

これらは、確かに「吠える」という問題の原因なのかもしれません。
しかし、だからといって「解決に繋がる原因か?」というと、そうではありませんね。
「ダックスだから吠えている」と言われても、犬種を変えることなんて不可能ですし、「遺伝だ」と言われても、遺伝子を書き換えることも絶対に無理です。
どうしようもありません。

そこで、発想を変えるわけです。

「他犬に吠えているのは、そのように学習したからだ」

こう考えてみたら、何となく「何とかなりそうだ」と思いませんか?
「犬種のせいだ」と言われたら、もう話はそこで終わってしまいます
しかし「そういう風に学習してしまったから」と言われたら、まだ何とかできそうな感じがしますね。

・他犬への吠えの原因=犬種/遺伝のせい→解決できない
・他犬への吠えの原因=そういう学習をしたから→解決できそう

そして行動分析学が扱うのは、まさにこの「学習をした行動の変容」です。
行動分析学では、基本的に「繰り返し起こる行動は、すべて学習されたもの」という考え方をします
つまり「何とかなる」を、徹底的に目指す学問です。

少し長くなりました。
次回も同じテーマでお話します。

それでは。

高山

カテゴリー: 行動分析学についてのあれこれ — dlc-pro 4:43 PM

行動学と行動心理学と動物行動学と行動分析学 5

こんにちは。

行動分析学についてのあれこれ、第5回目です。

前回のエントリでは、「因果関係」のことについて、簡単に述べました。
そして、行動分析学は、まさにこの「因果関係」に迫っていく学問なんですね。
つまり、「行動が何故起こったのか?その原因に迫る学問」であるわけです。
これは、トレーナーであれば、是非とも知りたいところですね。

そのことについて、もう少し詳しくお伝えします。

前回のエントリで「相関と因果の違い」というものに触れましたが、さて、これらがどう違うかはおわかりになるでしょうか?

たとえば、あなたがある日「てるてる坊主」を部屋の窓から吊るしたとしましょう。
すると、翌日の天気が晴れになりました。

てるてる坊主を吊るす → 晴れになった!

では、「晴れになった原因」は、「てるてる坊主」のおかげと言えるでしょうか?

別の日に、あなたはとある公園の池でナマズを見つけました。
じっと見ていると、ナマズが激しく暴れ始め、すぐに大きな地震が起きました。

ナマズが暴れた → 地震が起きた!

では、「地震が起きた原因」は、「ナマズが暴れたから」と言えるでしょうか?

いずれも、「そんなバカな」というたとえ話ですね。
「翌日の天気が晴れになった」のは、偶然の話です。
ナマズが暴れた後に地震が起こったのも、たまたまです。

しかし、私たち人間は、2つの出来事が連続して起こると、その間になんらかの関係があると思い込んでしまいます
たとえば、「自分が出かけると、雨が降ることが多い」ということが続くと、「自分は雨男に違いない」なんていう風に思い込んでしまいます。

上に書いた「地震はナマズが起こしている」という例は、大昔から伝わる迷信ですね。
地震が起こるメカニズムを知らない昔の人たちは、「ナマズが暴れる→地震が起こる」という現象を何度も見たことで、「地震はナマズが起こしているに違いない」と、思い込んでしまったのだろうと思います。

確かに、「地震」と「ナマズが暴れる」という2つの現象・出来事の間には、何度もそういったことが起こっているのであれば、何らかの関係がありそうです。
この「何度も起こってるから、何か関係がありそうだな」という関係性のことを、「相関関係」と言います。

そして「地震はナマズが起こしている」という、「地震の原因=ナマズ」のような、「原因と結果」の関係性のことを、「因果関係」と言います。

「地震」と「ナマズ」の関係性(相関関係)が、「地震の原因=ナマズ」という関係性(因果関係)であるということを、一度大真面目に検証してみましょう。
どうすれば良いでしょうか?

地震の原因がナマズであれば、「ナマズがこの世から1匹もいなくなったら、地震は起きない」ということになります。
あるいは、「ナマズを暴れられないように固定してしまえば、地震は起きない」ということになります。
いわば「実験」を行ってみるわけですね。
その結果、「ナマズがいなくなったら、本当に地震が起こらなくなった」なんてことになれば、「地震の原因=ナマズ」と言えそうです。
反対に、「ナマズはもういないのに、地震はまだ起こっている」なんてことになれば、「地震の原因≠ナマズ」ということになります。

ここでお伝えしたいことは、「ものごとの原因」というのは、このような「実験」を行うことでしか、明らかにならないということなんですね。

先ほども書いたように、私たちは「2つの出来事が連続すると、その間に何らかの関係性があると思い込んでしまう」という、思考の癖を持っています。

「Aのあとに、Bが起きた→Bの原因は、Aである」

専門的には「前後即因果の誤謬(ごびゅう)」というものです。
迷信などは、これに分類されることが多いようですね。

さて、ドッグトレーニングの現場において、「行動の原因」というのはある程度のウェイトを占めます。
特に「行動的な問題(いわゆる、問題行動と呼ばれるもの)」を、解決しようとする際には。

「何故、この犬はトイレを失敗するのか?」
「何故、この犬は吠えるのか?」
「何故、この犬は噛むのか?」

原因がわかれば、解決策も思いつきそうですものね。

しかし、この「原因」が、実は「単なる思い込み」だったとしたら?
なかなか怖い話ですね。

ということで、また次回に。

高山

カテゴリー: 行動分析学についてのあれこれ — dlc-pro 6:08 PM

行動学と行動心理学と動物行動学と行動分析学 4

こんにちは。

色々な行動学についてのお話、第4回目です。

前回は、行動分析学は循環論法を、徹底的に避けるというお話で終わっていました。
循環論法とは「何故吠えているの?」→「警戒しているから」→「何故警戒しているとわかるの?」→「吠えているから」というように、同じところをぐるぐると回ってしまうような論法のことです。

では、行動分析学ではどのように考えるのでしょうか?

行動分析学は、「行動は、環境との相互作用によって決まる」という考え方をします。
ちょっとわかりにくいですね。
「要求吠え」を例に、このあたりをご説明します。

いわゆる「要求吠え」とは、「犬が独りぼっちになると、飼い主が構うまで吠える」というものになろうかと思います。
では、何故「飼い主が構うまで、吠える」のでしょうか?
寂しいから?いいえ、この説明では行動分析学は納得しません。
循環論法に陥いってしまうからです。

「何故独りになると吠えるの?」
「寂しいから」
「何故寂しいとわかるの?」
「独りになると吠えているから」

ぐるぐると同じところを回ってしまいますね。

そこで行動分析学は、「行動の結果」に注目します。
要求吠えは、「飼い主が構うまで吠える」という行動でした。
つまり、「要求吠えをしたら、飼い主が構ってくれる」という「結果」が、生まれるわけです。
そして、この「結果」こそが、「行動の原因である」と考えるのが行動分析学です。

吠える → 構ってもらえた!

では、何故この「構ってもらえた!」が、「行動の原因である」と言えるのでしょうか?
そこには、「相関と因果」という、非常に大切な概念が関わってきます。

「相関と因果」この違い、わかりますか?
よく「因果関係」とか言いますよね?
あの「因果」です。

詳しいことは次回に回すとして、少しイントロダクション。

「因果」というのは、文字通り「原因と、結果」のことです。
この両者を指して「因果」と呼ぶんですね。

たとえば、宮崎県内で猛威を振るっている「口蹄疫」。
これは、「口蹄疫ウィルス」が、原因で起こる病気です。

では、何故「ウィルスが原因だ」といえるのでしょうか?
これ、考えたことはありますか?

「ウィルスが原因だ」というためには、何をすれば良いのでしょうか?
まず、「口蹄疫」を発症してしまった牛を調べます。
すると、「他の健康な牛にはない、ウィルス」が見つかります。
しかし、これだけでは「このウィルスが原因だ」とは言えません。
たまたま、そのウィルスが入っていただけかもしれないからです。

そこで、そのウィルスをやっつける薬を作ってみます。
そしてウィルスをやっつけた後、口蹄疫の症状がおさまったら、「口蹄疫の原因は、このウィルスだったんだ」ということが、はじめて言えるわけです。

この流れ、結構重要です。

1 口蹄疫の牛を調べた
2 なんかウィルス見つかった
3 ウィルスをやっつけてみた
4 口蹄疫がなおった!
5 ウィルスが原因だったんだ

「ウィルスが見つかっただけ」では、まだ原因ではないんですね。
そのウィルスをやっつけて、はじめて原因と言えるわけです。

行動分析学は「行動の原因」も、この流れと同じように考えます

そしてこのことが、「行動分析学」が「行動の原因を、環境に求める」ことの、大きな理由になります。
更に、この考え方こそが「行動分析学」が「行動の科学」と呼ばれる所以でもあるわけです。

ということで、また次回に。

高山

カテゴリー: 行動分析学についてのあれこれ — dlc-pro 11:13 AM  コメント (0)

行動学と行動心理学と動物行動学と行動分析学 3

こんにちは。

色々な行動学についてのお話、第3回目です。

「犬のしつけ」の世界で一般的に認知されている「行動学」といえば、やはり「動物行動学」になろうかと思います。
この「動物行動学」と「行動分析学」の対比を続けつつ、「なぜ、行動分析学なのか?」について、色々と。

前々回のエントリでも書いたように、動物行動学は「図鑑に載る」ような問です。
「犬という動物は、生まれてから死ぬまでに、こんな行動をします」みたいな。
犬という動物の行動カタログ」と言うと、わかりやすいでしょうか?

ですから、子犬を飼ってから、たとえば「生後〇ヶ月~〇ヶ月の間に、甘噛みをするようになります」とか、「大体〇ヶ月頃になると、オス犬は足を上げておしっこをするようになることが多い」とか、そういったことを「知る」ためには、非常に役に立つ学問といえます。

いわゆる「問題行動」についても、考えてみましょう。
たとえば、「他の犬に吠える」という行動です。
動物行動学では、「他の犬に吠えるという行動を、犬という動物はする傾向にある」ということはわかります。
さらに「おそらく、縄張りというものがあって、そこへの侵入者に対する警戒行動の一種と考えることができる」ということも、わかるかもしれません(このあたりの見解や表現の仕方は、研究者によって違うこともあると思います)。

では、「この『吠える』という行動は、警戒行動である」ということがわかったとしましょう。
でも、トレーナーという職業である以上、それだけでは足りませんね。
「では、どうすればこの『吠える』という行動はなくなるのか?」ということがわからないと、意味がないわけです。

飼い主さんから「なぜ、うちの犬は吠えるんでしょうか?」という質問を受けて、「警戒してるんですよ」だけでは、足りないんです。

「警戒してるのは見ればわかる。じゃあどうするんですか?」

これがわからないと、意味がありません。

そこに、「行動分析学」が使えるんですね。

通常、私たちは「行動の原因」を考える際、「意識」や「感情」といった「内面」を考えます。

「むかついたから、殴った」
「悲しいから、泣いた」
「楽しいから、飛び跳ねた」

こんな風に。

しかし、実はこの説明は何も説明していないんですね。

たとえば、「他の犬に吠える犬」を例に、考えてみましょう。

「この犬が吠えているのは、他の犬を警戒しているからだ」という説明があったとします。

「警戒しているから、吠えている」

うん、納得できそうです。

でも、ここにちょっと意地悪な質問をぶつけてみます。

「どうして、警戒しているってわかるんですか?」
「他の犬に、吠えているからですよ」
「どうして吠えてるんですか?」
「警戒しているからですよ」
「どうして警戒してるってわかるんですか?」

おやおや?なんだか変なことになりました。
このように、ぐるぐると同じところを回ってしまうような論法を「循環論法」と呼びます。

そして、行動分析学はこの「循環論法」を徹底的に排除しようとします。
そのために、「行動の原因を、体の外に求める」という立場を取るわけです。

さて、続きはまた次回に。

高山 仁志

カテゴリー: 行動分析学についてのあれこれ — dlc-pro 1:50 PM  コメント (0)