『行動学』を学びませんか!?(8)

それでは、前回の回答です。

“消去バースト”の説明以外に不足していたものとは…。

まず一つ目は『“無視”の具体的な説明がされていない』ことが挙げられます。

これは、どういうことかというと、私たちドッグトレーナーが俗に言う“無視”という対処を、飼主様はそのままではできないということです。

つまり、少なくとも
①見ない
②触れない
③声かけない
という3点セットを具体的に飼主様に示す必要があるということなのです。なぜならば、飼主様は“無視”をしているつもりでも、いつのまにか何の悪気も無く“アイコンタクト”をとってしまっていたりする訳です。要するに、飼主様がイメージする“無視”と私たちドッグトレーナーが知っている“無視”とは違うものなのだということです。しかし、これでは、“無視”が成立しません。実際、『行動分析学』における実験でも「“注目”は強化子になり得る」ということが検証されており、これが意図せず時折実施されてしまうと、事実上の“部分強化スケジュール”として対象となる行動がさらに強化されることが分っています。厳密にいうと、“動く”ことすら強化子になってしまう場合があるので、確実に“無視”を実行してもらうためには、最低限の説明として付け加えておくべきでしょう。

さらに具体的な説明としては“無視”の次の行動はどうすればよいのか?』ということに触れられておらず、飼主様は「いつ“無視”から次の行動へ移れば良いのか」が分らず、吠え止んで10秒程もすると、今だとばかりに「おぉーっ!!よくできたっ!!」などと言って、犬を褒めてしまいます…。これでは、上手くいきません。『行動分析学』には、“反応(=目的とする行動)の直後に強化子を与えることでその反応を強化しやすくなる”という「即時強化」という考え方があり、その“直後”を“60秒以内”と定義する「60秒ルール」というものがあります。この考え方からすれば、「要求吠え」と呼ばれる行動の場合、吠え止んでから少なくとも60秒以上は、犬に対して一切の(飼主の)反応を示さないようアドバイスするべきです。さもなくば、これもまた“部分強化スケジュール”の要領で対象となる行動がさらに強化されることになり「上手くいかない」原因の一つになってしまいます。
よって、これを二つ目の不足事項としてもいいでしょう。

そして、三つ目は、『この3点セットが確実に実行できなければ、逆に「要求吠え」が“強化”される可能性が高くなるという“リスク”を飼主様に説明していない』ということです。

これは、道義的にも大きな問題です。飼主様は、ドッグトレーナーの指導によって“無視”という対処を行う訳ですから、そこに内在する“リスク”に関しては、きちんと説明する義務がドッグトレーナーにはあるはずです。そんな“リスク”があると分っていたなら、飼主様は、そのアプローチを拒んだかもしれませんし、実行する際も、“消去バースト”の説明と併せて提供することができていたなら、以前よりひどくなったからといって、諦めるような事態にはならなかった可能性が高くなります。また、この“リスク”を説明することによって、飼主様には“選択肢”が出現し、どちらかを選ぶことによって以前よりも症状を悪化させずに済ませることができます。

そういった意味でも、これは「知らなかった」では済まされない事柄ですし、「知っていて説明していない」のであれば、背任行為と言われても仕方がありません。

以上が、前回の回答です。

少々厳しい話でしたか?もしくは、「なるほどっ!!」と思っていただけるような話でしたか?それとも、やっぱり「そんなことぐらい知ってるよ!!」という話でしたか?

いずれの感想でも構いません。

しかし、確かに言えることは、このような説明不足によって、飼主様自身が「上手くいかない」現実があり、「ドッグトレーナーには来てもらったが、改善されなかった」という実績を積み上げているのだという事実があるということです。

そこから目を背けないようにしましょう。

そして、『やり方』ではなく『理論』で理解することの重要性を分かっていただければと思います。

さて、ここまで説明しても、飼主様は、“無視”を続けることができないことがあります。

ここから先が、『行動分析学』の真骨頂とも言うべき部分なのですが、なんだか分かりますか!?

またまた回答は、次回に続きます…。

お楽しみに。

DLC-PRO 山崎 崇

カテゴリー: 『行動学』を学びませんか? — dlc-pro 5:25 PM  コメント (0)
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