ドッグトレーナーの『理論』
前回は、「ドッグトレーナーとは、不思議な職業だ…。」という、“識者”の方々の感想だった訳ですが、今回は、そこから更にもう少し踏み込んで“ドッグトレーナーの持つ『理論』”についての指摘です。
以前にも少し取り上げたことのあるトピックですが、ドッグトレーナーの持っている『理論』が、必ずしも『理論』とは呼べない場合が非常に多い…というか、ほぼ『理論』とは言えないものばかりだという現実について、お話したいと思います。
なぜ、“ドッグトレーナーの唱える『理論』は『理論』ではないのか!?”
それは、『理論』と呼ばれるものの“定義”をきちんと理解することで、明確にお分かりいただけるでしょう。
では、『理論』とは何か?
辞書では、以下のように説明されています。
『理論』:個々の現象を法則的、統一的に説明できるように筋道を立てて組み立てられた知識の体系。また、実践に対応する純粋な論理的知識。
ん~、なんだかよく分らないですね。
「それではっ!!」ということで、専門書を紐解いてみると、『理論』として以下に示す5つの基準が一般的に重要であるとしています。
【『理論』において重要な5項目】
1.検証可能性(反証可能性)
『理論』は、事実に対して検証可能な明確な“予測”を作らなければならず、原則的に“間違っている”と証明できる「反証可能性」を兼備していることが良い『理論』として一般に同意されており、“間違っている”ことを証明することができない『理論』は予測的価値を持たないとされる。
2.簡潔性
もし、2つの理論がデータの主要部分を説明する能力において等しいならば、仮説の構成物と仮定が少ない方の『理論』がより好ましい。
3.普遍性
より広範囲の観察によって、より多くの現象を扱える『理論』は、範囲の制限された『理論』よりも優れていると通常判断される。
4.多産性
科学的な『理論』の重要な特性は、特定の課題についてさらなる研究と思考を刺激する能力を有していることが望ましい。
5.データとの一致
これは、『理論』が“いかにうまく事実と一致するのか?”ということに関する最も明らかなテストとして事実の特定された部分をかなりうまく説明することを要求するものである。
ん~~、ますます難解になってしまいましたね…。
では、これを、“ドッグトレーナーの『理論』”の代表格である「リーダー論:イヌと飼主との主従関係(上下関係)が逆転しているから飼主に従わないのだとする理論展開」に照らしてみることで、分かりやすくしてみましょう。
続きは、次回です。
それまでに、皆さんも、一度ご自身の“ドッグトレーニングに関する『理論』”について考えてみてください。
≪引用文献≫
ジェームズ・E・メイザー(2008),メイザーの学習と行動,二瓶社,P.6-7.
DLC-PRO 山崎 崇