行動学と行動心理学と動物行動学と行動分析学 6
こんにちは。
行動分析学についてのあれこれ、第6回目です。
前回のエントリでは「相関と因果」について、簡単にお話しました。
そして、「因果、すなわち物事の原因というのは、実験をすることでしか明らかにならない」というのが、前回のエントリでお伝えしたかったことです。
さて今回は、「適切な原因と不適切な原因」というお話をしたいと思います。
前回のエントリで「地震の原因は、ナマズかどうか?」というお話が出ました。
もちろん、ナマズなわけがありません。
詳しいことは調べていただくことにして、まあおおよその原因をいえば、「大陸間のプレートのずれやひずみが云々」とか、「活断層が云々」とか、「火山が噴火する前に云々」とか、そういったことが「地震の原因」とされています。
さて、これで「地震の原因」がわかりました。
では、私たちは地震を未然に防ぐことができるでしょうか?というと、これまたそんなわけはないですね。
もっともっと科学技術が進歩すれば、ひょっとしたら地震が発生する前になんとかすることができる時代も来るのかもしれませんが、今の私たちの科学では「地震の原因」はわかっても、「地震が発生すること」を、止めることはできません。
では次に、「地震による家屋の倒壊」という問題を考えてみます。
家屋が倒壊するのは、紛れもなく「地震のせい」です。
地震が起きなければ、倒壊せずに済んだでしょうから。
しかし、先述したように「地震をどうにかすること」は、私たちには無理です。
じゃあ、どうすれば「家屋の倒壊」という問題を、解決することができるんでしょうか?
ここで、発想を変えます。
「家屋が倒壊するのは、地震に耐える強度を持っていないからだ」と。
このように考えれば、「家屋の倒壊問題」は、解決できそうですね。
「かなり大きな地震がきても、これだけ補強していれば大丈夫だ」となるわけです。
さて、そろそろ「この話と、犬のしつけになんの関係があるんだ?」と思い始めていらっしゃるかもしれませんね。
実は、大いに関係があるんです。
「地震による家屋倒壊問題」の例を書き換えると、下のようになります。
・家屋倒壊の原因=地震が起こるから→解決できない
・家屋倒壊の原因=強度が足りないから→解決できそう
実は、これと同じようなことを、「犬のしつけ」にも見ることができます。
それはたとえば、「他犬への吠えの原因」です。
犬が他の犬に吠えたりしている時、その原因を「犬種」や、「遺伝」といったところに求めるような話を、聞いたことはないでしょうか?
あるいは、そのように飼い主さんに説明したことはありませんか?
たとえば「ダックスは吠えやすい犬種だから」とか、「この子の親も、よく吠えていたから」とか。
これらは、確かに「吠える」という問題の原因なのかもしれません。
しかし、だからといって「解決に繋がる原因か?」というと、そうではありませんね。
「ダックスだから吠えている」と言われても、犬種を変えることなんて不可能ですし、「遺伝だ」と言われても、遺伝子を書き換えることも絶対に無理です。
どうしようもありません。
そこで、発想を変えるわけです。
「他犬に吠えているのは、そのように学習したからだ」
こう考えてみたら、何となく「何とかなりそうだ」と思いませんか?
「犬種のせいだ」と言われたら、もう話はそこで終わってしまいます。
しかし「そういう風に学習してしまったから」と言われたら、まだ何とかできそうな感じがしますね。
・他犬への吠えの原因=犬種/遺伝のせい→解決できない
・他犬への吠えの原因=そういう学習をしたから→解決できそう
そして行動分析学が扱うのは、まさにこの「学習をした行動の変容」です。
行動分析学では、基本的に「繰り返し起こる行動は、すべて学習されたもの」という考え方をします。
つまり「何とかなる」を、徹底的に目指す学問です。
少し長くなりました。
次回も同じテーマでお話します。
それでは。
高山